1馬力から2馬力へ。
資産形成の構造は、シンプルです。
収入はすでにある。支出も極端には変えられない。でも「資産 × 利回り」の部分がちゃんと設計されていない人が、思いのほか多い。
「節約しろ」とよく言われます。でも高収入の人の優先順位は、少し違うと思っています。自分が仕事をしていた頃、東京のど真ん中のタワマンに住んでいました。家賃は高かった。でもそれは、本業のパフォーマンスを最大化するための選択でした。通勤に時間と労力を使いたくなかったから。支出を削るより、入金力を上げることに集中していた。
資産形成には、手をつける順番があります。
多くの人は、収入を増やすことに毎日すでに全力でやっている。本業のことは、誰より考えていると思います。
でも、資産運用についてはどうでしょう?
長期の資産運用は、複利の効果を最大限享受するゲームです。そのためには時間を味方につけないと意味がない。だからこそ、後回しにせず、適当にやらず、1日でも早くちゃんとした設計のもとに仕組みを作った方がいい。
だから順番はこうなります。
本業に費やしているエネルギーの1%でいい。まず資産運用の設計を整える。それだけで、毎月の積立が複利として積み上がり始めます。収入が上がれば上がるほど、その設計が活きてきます。
お金のために働くだけでなく、お金にもあなたのために働いてもらう。その仕組みが動き始めると、富の形成のスピードが変わります。
でも、その仕組みを安心して動かし続けるには、前提があります。
正直に言います。
資産運用を始めた頃、自分はずっとドキドキしていました。下がり止まって上がったときは「あーよかった」と胸をなでおろす。でも心のどこかで、あのまま下がり続けていたら耐えられなかったかもな、とも思っていました。
そして実際に、やってしまいました。
運用資産を数百万から数千万に増やしたとき、毎日100万円単位で減っていく画面を見ながら、「とりあえず売却」したんです。頭では長期投資と決めていたのに。
後悔というより、適当にやってはダメだと思いました。でもどうしたらいいのかわからず、たくさんの現金を残したまま、少しずつ積立しながら、ひたすら勉強する期間が続きました。
ネットで資産運用の質問をしたことはありますか。
「自分は何歳で資産はいくら、このポートフォリオはどうでしょうか」という質問に、いろんな回答がつきます。自分だったらこうします、という単なる個人の意見。この商品は意味がないからこうしたら、という説明。そして、あなたのリスク許容度次第ですね、というまともな回答。
でも、リスク許容度をどうやって調べるのか、誰も書いていないんです。
以前、IFAの方にリスク許容度を客観的に計測してからポートフォリオを提案しているか聞いたことがあります。していない、と言われました。ファイナンシャルプランナーの方も、少なくとも自分が出会った範囲では、ライフプランを書かせて必要な利回りから逆算してポートフォリオを提案していました。リスク許容度の計測は、その前提に入っていませんでした。
やっているプロがいるかもしれません。自分が知らないだけかもしれない。でも少なくとも、「リスク許容度次第」と言いながら、その計測方法を示してくれた人には出会えませんでした。
転換点は、「リスク許容度」という概念を知って、実際に計測したことでした。
当時、アメリカの保険会社のサイトで計測してみました。自分がどのくらいの下落まで冷静でいられるか、どのくらいの期間市場に居続けられるか、数字として把握できた瞬間、何かが変わりました。
その範囲に収まるポートフォリオをどう組むか、試行錯誤が始まりました。感情ではなく、設計として運用できるようになったのは、そこからです。
株価下落は、避けられません。
来るか来ないかではなく、いつ来るかの問題です。リーマンショック、コロナショック、そして次の何か。名前はまだついていないけれど、来ます。
だからといって、逃げればいいわけでもありません。S&P500の過去30年のデータがあります。最良の10日間を逃し続けると、リターンは半減します。そしてその最良の日は、最悪の日の直後に来ることがほとんどです。下落が怖くて市場から出た瞬間に、急回復の日も一緒に逃してしまう。
市場に居続けることが、長期投資の唯一の正解です。でも、それができなかった。自分のリスク許容度を把握していなかったから。
「高リターンか、安全か」という2択で悩んでいませんか。
どちらを選んでも何かを諦めた感覚が残る。その宙ぶらりんな状態のまま、現金を大量に持ちながら機会損失している気もする。
自分もその場所にいました。
でも、これは2択ではありません。リスク許容度の範囲内で最大限のリターンを取りに行く、という設計があります。ダウンサイドを許容範囲に留めながら、長期運用で損失リスクを軽減し、リターンをしっかり享受する。トレードオフではなく、トレードオンの考え方です。
そのためにまず必要なのは、自分のリスク許容度を正確に把握することです。どのくらいの下落まで冷静でいられるか。どのくらいの期間、市場に居続けられるか。その輪郭がはっきりすれば、その範囲内で最大限のリターンを取りに行けます。
孫子は言いました。「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」と。
資産運用に置き換えると、こうなります。
彼を知り己を知れば百戦殆うからず
この両方が揃ったとき、感情ではなく設計で運用できるようになります。タイミングを読もうとする投機的なギャンブルではなく、構造として長期で勝ちに行く運用です。
そして、複利を味方につける。
最初の数年は正直、地味です。積み立てているのに思ったほど増えない。でも5年を超えたあたりから、曲線が変わり始めます。10年、20年と経つにつれて、加速度が全然違う。
複利を最大限に活かす条件は3つだけです。
この3つはすべてつながっています。タイミングを読もうとした瞬間に、複利が壊れます。予測しようとした瞬間に、設計が崩れます。
市場に居続けられる自分を設計する。そのために必要なのは予測力ではなく、自分のリスク許容度の範囲内で組まれた、揺さぶられないポートフォリオです。
あなたが安心して眠れる夜は、設計の先にあります。
このツールについて。
このツールでは、リスク許容度を1から7の7段階で数値化します。スコアが高いほどリスクを取れる設計、低いほど安定重視の設計が向いています。
計測は2つの軸で行います。
この2つは必ずしも一致しません。客観的には余裕があっても、心理的に耐えられなければ、下落時に手が動いてしまう。このツールでは両方を計測して、低い方を自分の許容度として採用します。それが、設計が崩れない理由です。
もうひとつ、大事なことがあります。リスク許容度は、一度計測すれば終わりではありません。転職・結婚・子供の誕生・退職など、大きなライフイベントのたびに変わります。収入が変われば、取れるリスクも変わる。家族構成が変われば、心理的な余裕も変わる。でもポートフォリオは前の自分のまま動き続けている。そのズレが、次の下落局面でエンストの原因になります。
数年に一度、あるいは大きなライフイベントのたびに、自分のポートフォリオが今の自分のリスク許容度の範囲に収まっているか確認する。その習慣が、長期運用を守ります。
計測結果は投資の推奨ではありません。設計の起点です。
己を知るところから、すべては始まります。
資産運用の設計がしっかりハマれば、あとは本業に集中するだけです。入金力が上がるほど、富の形成が加速します。
お金のために走り続けなくていい。設計した仕組みが、あなたの代わりに静かに動いている。そういう状態を作るための、最初の一歩をここから始めてみてください。